◎ 五郎ケ島

昔瀬戸に五郎という少年が住んでおりました。ある日、その五郎が番所崎の離れ小島ヘアマノリを採りに行きました。そして一生懸命にかき集めては小高いところへ積んで、今日は大変な収穫であると喜んでいたのですが、知らぬ間に潮が満ちて来てこの離れ小島から陸地へ帰れなくなってしまいました。

「さあ、どうしよう」と半泣きになっているところへ二羽の烏が飛んできて左右にとまり五郎を守ってくれるように一晩中離れませんでした。そして夜が明けて、潮が引いて岸へ渡れるようになると烏はどこへともなく飛んでいきました。五郎はたくさんの荷物を背負って帰り、近所の人達にこの烏の話をすると、村の古老は「おまえを守るために氏神さんが烏を遣わしたのだ」と言って、それからはこの島を「五郎の島」というようになりました。

「瀬戸古事」より
◎ お菊の棚

名勝千畳敷の南に「お菊の棚」というところがあります。このお菊の棚には次のような悲しい伝説があります。
昔、湯崎にお菊という潜りの上手な海女がおりました。そして、お菊は二、三人の友達と連れ立って千畳敷の方へ潜りに行って大変収穫をあげていました。

今日も少し離れた所で貝や小蛸を採っていると、奥から大蛸が現れてお菊の足にからみつき、ジリジリ奥のほうへ引き込んで行きました。お菊は悲鳴をあげて岩角にしがみつき必死に抵抗しましたが、とうとう奥へ引き込まれ再び浮上して来ませんでした。他の同僚は哀れんで花束を投じ、この棚を「お菊の棚」と呼ぶようになりました。

「黒潮」四十三号より