昔、鉛山村に豆屋逸八という猟師がおりました。あるとき、彼が山へ猟に出掛けたところ、はるか彼方の岩上に見馴れぬ大きな鳥が羽を休めていました。彼は狙いを定めて鉄砲を撃ちましたが、弾丸はその鳥の右の翼を撃ち抜いただけでそのまま飛んでいってしまいました。

そして翌日の夕方、逸八が崎の湯へ入りにいくと、すでに一人の大男が入浴していました。旅の人らしいので逸八が「どちらから来たのですか」と尋ねたところ、「私は豆屋逸八という猟師に右肩を撃たれたので湯治にきているのです」と答えました。

驚いた彼は早々に風呂から上がって逃げ帰り、近所の人たちにそのことを話して回りました。その話を聞いた人達はみんな怖がって、七つ刻(午後四時)を過ぎると誰も崎の湯へ行かなくなりました。

(注)この話は子供の頃からよく聞かされた伝説ですが、これとよく似た話が各地に残されています。和歌山藩に間宮市八という銃砲家がいて、この人がモデルになっているようなフシもあります。