瀬戸二丁目の辻若一郎さんの家は古い家柄です。今から三百年程前、この家に一人の娘さんが生まれました。そしてこの娘さんがだんだん成長するにつれ鄙にはまれな美人になりました。そして近所の若い衆がこの娘さんを一日見ようと垣根越しに覗きこむようになり、それがまた評判になって遠くからも弁当持ちで見にくるようになりました。しかし、娘さんはそのことを悩むようになり、とうとうそれを苦にして入水自殺を遂げたのです。家族は嘆き悲しんで娘さんの供養のために自宅へ地蔵さんを祀って弔いました。

その後、安政の大火でこの辺りも焼けましたが、誰かがこの地蔵さんを隣の塀の上へ上げておいたので難を逃れることができました。けれども、この地蔵さんの一部は焦げてしまっていたので、明治になってから新たに刻み直し今日に至っています。

この地蔵さんの祭りは八月二十三日で、毎年この日が来ると家族や近所の人達が集まって、地蔵さんを水桶に浸けてお念仏やご詠歌をあげています。今でもこのお地蔵さんにお参りすると美人になると言い伝えられています。